「生業」「家業」「事業」という概念について
起業するにあたって、知っておいて頂きたいことの一つに、「生業」「家業」「事業」という考え方があります。
1.生業とは、経営者と家族が生きるためにギリギリの利益を求めて行う事業をいいます。
2.家業とは、経営者とその家族の幸福の追求を目的として行う事業をいいます。
3.事業とは、従業員やお客様を含めた社会の幸福の追求を目的として行う事業をいいます。
それぞれ経営者の行動様式は大きく異なります。
生業の経営者は、とにかく自身の利益を求めて行動します。したがって、大きな利益を得ることは難しくなります。
家業の経営者は、家族の利益を優先します。したがって、従業員は低レベルの生活を強いられ、いつしか経営者の周りには優秀な人材がいないということになり、成長の芽を自ら摘む事になります。
起業の際に経営者の方に伺うと、最初はほとんどの方が「事業」を目指していると仰います。稀に家業を目指している方もいらしゃいますが、当初から生業を目指して企業される方には未だお目にかかったことはありません。
しかしながら、多くの中小企業が家業はおろか生業の域を出る事が難しいのが実情です。
その原因の一つとしては「事業」を目指すという志を忘れ、いつしか生業、家業の行動様式に染まってしまうということが挙げられます。
そして、それを生業、家業のスタンスで経営されている会計事務所が助長している側面があるという指摘をされる著名なコンサルタントの方もいらっしゃいます。
「業績が悪いから忘れる」という意見もある程度はあるでしょう。
しかし、自己実現という夢があるこそ起業したのではなかったでしょうか?
起業の成功には、粘り強さ、しつこさが絶対に必要なのです。
ですから、起業したら、行動様式が生業化、家業化していないかどうか確認することが重要になります。
また、「事業」として行動している会計事務所と付き合うことによって、ご自身のブレを修正することが可能になるかもしれません。
起業する前も起業してからも同じ夢を持ち続ける人だけが、夢の実現を果たすことが出来ます。
自分自身のあり方を、起業の目的に照らして整合性のあるものにするために、この概念を是非忘れないようにして頂きたいと思います。