会社法施行により、種類株式の数が増えましたが、その中で創業時の資金調達に活用できそうな種類株式についてご説明したいと思います。
現在、会社法により発行可能な種類株式は以下の9種類です。通常の設立において関係してくる種類株式は以下のうち、譲渡制限株式です(オーナーにとって好ましくない第三者が株主になることをできる限り避けることが目的となります)。
旧商法においても、発行するすべての株式について譲渡制限をつけることができました(通常は、この形式での株式発行がされていました。)が、会社法では、全部ではなく、一部の株式について譲渡制限をつけることができるようになったところが異なる点です。
さて、今回お話したいのは、下記のうち「取得請求権付株式」と「取得条項付株式」についてです。
「取得請求権付株式」
これは、株主が会社に対して株式の買い取りを請求できる権利を持った株式です。たとえば、出資から3年経過後に時価で買取を請求できる権利をもった株式を10株発行して1,000万円の資金を調達したとします。3年経過後、会社の株価を計算すると1株110万円になっていたとします。株主はこの時点で会社に株式の買い取りを請求すれば、1,100万円で売れるので投資家としては100万円儲かったことになります。(あくまでわかりやすい例として書いていますので細かい話は抜きです。)
これなら、ベンチャーキャピタル以外の投資家からも資金が集めやすくなります。
「取得条項付株式」
これは、会社が株主に対して一定の条件のもと株式を強制的に買い取る権利をもった株式となります。たとえば、一定の業績や株価を基準とした条件を設定して、投資家にとって損が出ない条件を提示すれば、会社の主導権は確保したまま、資金調達を行うことができます。
具体的な活用にあたっては、定款の変更等の手続きだけでなく、長期的な視点からの資本政策等を考慮して検討する必要がありますので、専門家に相談されたほうが良いでしょう。
種類株式の種類
種類株式 | 内容 |
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剰余金の配当に関する優先株式 | 剰余金の配当について普通株式よりも優先権を持つ株式 |
残余財産の分配に関する優先株式 | 残余財産の分配について普通株式よりも優先権を持つ株式 |
議決権制限株式 | 議決権の行使について、普通株式とは異なる権利を持つ、あるいは全く権利を持たない株式 |
譲渡制限株式 | 株式を譲渡する場合に、発行会社の承認を必要とする株式 |
取得請求権付株式 | 株主が発行会社に株式を買い取ることを請求できる株式 |
取得条項付株式 | 会社が一定の事由が生じたことを条件として株主から株式を取得することができる株式 |
全部取得条項付種類株式 | 株式会社が株主総会の決議によって、全部の株式を株主から取得することができる株式 |
拒否権付株式(黄金株) | 一定の事項について特定の株主に拒否権を付与する株式 |
取締役等の選任権付株式 | 当該種類株主総会で取締役、監査役を選任することができる |