現在、弊社の資金繰りは何とかギリギリ回っていますが、借入金の残高もそれなりの金額になっており、いざというときに借入ができるかどうかが気がかりです。
世間でよく正常先とか要注意先といった言葉を耳にします。
会社がどこの区分に入っているかによって、金融機関の融資姿勢が変わってくるとも聞きます。
弊社が正常先かどうかを知ることは可能でしょうか?
回答
金融機関は、原則的に融資先が正常先かどうか等の情報を教えてくれません。
しかし、聞きようによっては、御社のだいたいの位置づけを知ることはできると思います。
ただし、もっとも重要なことは、金融機関が御社をどのように見ているのか(お金を借りるうえでの御社の位置づけ)を御社自身で予測できるようになることです。
御社の側で自社の位置をある程度予測し、金融機関の担当者に質問することによって、その予測が見当違いでないかを担当者の反応から判断するのです。
このようなコミュニケーションをとるためには、金融機関の信用格付けと債務者区分について知る必要があります。
信用格付け・債務者区分がどのように行われるのかを知ることはとても重要です。
なぜなら、ご質問のとおり、融資を獲得できるかどうか、獲得できるとしたらその額はいくらかということは、御社の格付け、債務者区分で決まってしまうからです。
自社の位置づけが予測できるようになるということは、イコール、御社の資金調達余力(あとどのくらいのお金を借りられるか)を計ることができるということです。
以下で、それらについて、概要を見ていきます。
信用格付けとは
金融機関が、自行の資産(貸付金等)を自己評価し、分類分けすることを自己査定といいます。
一つ一つの貸付金の回収可能性を自分で判断するわけです。
この自己査定の結果に応じて、金融機関は、それぞれの資産に対する償却、引当を行わなければならないこと、償却、引当を行うことが金融機関の貸出姿勢に与える影響については、別稿「償却費を削った試算表の提出」で述べましたね。
話を戻します。
その査定にあたって行われるのが、信用格付けであり、それに基づく債務者区分で、それらが適切かどうかを金融庁が検査しています。
俗にいう「金融検査マニュアル」は、検査時に金融庁の検査官がよるべき基準です。
一方、金融機関は、自己査定をする際の基準として各行独自で自己査定マニュアルを作成していますが、このマニュアルは金融検査マニュアルがベースとなっています。
金融庁の検査を前提として自己査定をするわけですから、当然といえば当然ですが、このことは、各行の自己査定マニュアルの内容は大きくは変わらないことを意味します。
自己査定マニュアルは金融機関外部の人間はその内容を知ることができませんが、金融検査マニュアルは公表されていますので、そこから自己査定マニュアルの内容を伺い知ることはできそうです。
金融検査マニュアルでは、「資産査定管理態勢の確認検査用チェックリスト」の「自己査定(別表1)自己査定基準の適切性の検証」という欄で「信用格付」について、次のように規定しています。
「債務者の財務内容、格付機関による格付、信用調査機関の情報などに基づき、債務者の信用リスクの程度に応じて信用格付を行う。また、信用格付は、次に定める債務者区分と整合的でなければならない。」
では、金融機関が行う信用格付とは、どのように行われるのでしょうか?
次回で、その内容に迫りましょう。