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相続時売渡請求その2

その1では、相続時売渡請求の概要とこの制度が整備された背景について書かせていただきました。
その2では、実際に自社株式を回収するときの手順、また、なぜ原始定款作成時にこの制度の導入を検討した方がよいのか及び手続き導入にあたっての注意点について説明していきます。

相続時売渡請求の手順


実際に、相続人から自社株式を回収するときの手順は次のとおりです。

①自社株式を自社に売り渡すことを会社が相続人に対して請求できる旨を定款に定める
これによって初めて相続人から強制的に自社株式を回収できる権利を持つ会社が生まれます。

②株主総会(臨時総会でも可)の特別決議により、次の事項を定める
a)売渡請求する株式数
b)売渡請求先の相続人の氏名又は名称
株主の誰かに相続が発生したときに、会社が実際に自社株式の回収にかかるかどうかを決定します。
売渡請求の行使について株主からの提案がなければ、自社株式はそのまま相続人に引き継がれます。
株主総会は売渡請求の都度、開催しなければなりません。

③売渡請求の実行
相続があったことを知った日から1年以内に限ります。

④売買価格について、会社と相続人で協議
価格交渉が難航した場合は、売渡請求日から20日以内に裁判所への売買価格決定の申立が可能。

⑤売買実行

なお、この制度の利用は譲渡制限株式に限られます。
この制度も取得財源規制にかかるため、買い取ることができる金額は、分配可能額以下となります。

なぜ原始定款作成時に検討すべきなのか?


上記①のとおり、この相続時売渡請求権は、定款への記載が必要です。
原始定款に記載をせず、後になってこの権利を会社が持つためには定款変更をしなければなりません。
定款変更は、株主総会の特別決議事項なので、議決権の過半数を保有する株主が出席し、その出席株主の議決権の2/3以上の賛成があって実現します。
株主間の関係が微妙になってからだと、この制度の導入自体が困難になる可能性があります。
会社がこの制度を採用するためには、一般的には、原始定款作成時の方が容易であるといえるでしょう。

ただし、この制度には、オーナー一族にとってリスクもあります。
オーナー自身に相続が発生した場合にも、他の株主の相続と同様に売渡請求権が行使される可能性があるからです。
このリスク管理は、会社が本制度を採用するにあたっては必須となります。
そうでなければ、非オーナー一族の相続による自社株分散を目的として導入したはずの制度によって、オーナー一族が会社から締め出されることになりかねません。
上記②で、実際に会社が売渡の請求をすると決めるためには、株主総会の特別決議が必要になりますが、この総会においては売渡請求先の相続人は議決権を行使できなくなってしまいます。
オーナーの相続人が特別決議を阻止するために必要な議決権を有しているとしても、ひとたびその相続人を対象とした売渡請求権の行使が議案として株主提案されると、その売渡を請求するかどうかの決定にその相続人は関与できなくなってしまうのです。
会社に、自社株式回収に関する強い権利を持たせる制度ゆえ、オーナー一族にとっては両刃の剣といえます。

「じゃあ、結局どうすればいいんだ!」という皆様の声が聞こえてきそうです。。。
が、ここでは、会社設立時にこういった制度があるということを知っていただくことが重要であると私は考えています。
事実として、株式の分散が頭痛の種となってらっしゃる経営者の方が少なからずいらっしゃいます。
そして、あらかじめ準備をすればこの頭痛の種を回避できそうな制度が会社法によって新たに整備されたことも事実です。
この二つの事実を、情報として起業家の皆様に知っていただくことが大切だと思っているのです。
この制度を会社として採用するかどうかは、未来を予見しながらの判断となります。
不確かな未来を見通しながら、会社が得るメリットとオーナーが負うリスクを比較考量することが必要です。
オーナーが負うリスクは、作戦次第で増減します。
そのシミュレーションは、法的手続きに精通していないとできません。
この比較考量、作戦立案、シミュレーションを起業家の皆様と一緒にやるのが、私たちの仕事です。
ぜひ、コンサルタントとの無料相談窓口の門を叩いてください!
起業家の皆様が本業に集中できるようサポートさせていただきます。

※ なお、この記事は2008年11月7日現在の法律に基づいて記述しています。

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