ご覧いただいたとおり信用格付も債務者区分も、会社の決算内容によりほぼ決まってしまいます。
長くなってしまいましたので、この点につきもう一度、要点のみ復習しておきましょう。
まとめ
信用格付においては「定量項目」と「定性項目」があり、どの金融機関でも、7割から8割の点数を「定量項目」に割り振っています。
「定量項目」は決算書に基づく財務分析により、「定性項目」は、実質的には担当者の主観により採点がおこなわれます。
「定性項目」の採点は決算数値から解放されたところで行われますが、担当者の主観によるためその採点が平均値に集まりやすく、融資をうける会社間で差がつきにくいという傾向もあるようです。
一方、債務者区分は、「財務内容」と「貸出条件及びその履行状況」で判定されます。
財務内容については、単年度損益が赤字ではないか、繰越利益剰余金がマイナスではないか、債務超過ではないか、が判定基準となります。
貸出条件等については、借入をうける時に金融機関と約定した返済条件で返済が行えているか、債権放棄等をうけていないか、が判定基準となるのでしたね。
これら信用格付、債務者区分の判定作業の中で、決算書に基づかない項目は、信用格付における「定性項目」と債務者区分における「貸出条件及びその履行状況」のみです。
「貸出条件及びその履行状況」は約束を守るという意識を強く持つことでコントロールは可能です。しかし「定性項目」は、その判断が金融機関側の主観になるわけですから、借りる側でコントロールするのには限界があります。御社が、資金調達能力のある会社作りを目指すならば、その「定性項目」のコントロールを会社の優先事項とすることは、合理的ではありません。
結局、資金調達能力を上げるためには「定量項目」を意識しながら事業運営をするのが最も近道であると言えます。
決算にあたって優先順位の1番を節税に定めている会社はお金が借りにくい、というのはここに理由があります。
節税をするということは会社の利益を小さくすることです。
結果として「定量項目」の得点が低くなり、金融機関から見れば「貸せない会社」となります。
会社として成長できるチャンスがあるときというのは、多くの業種・業態で資金が必要なときでもあります。
そのようなときに資金調達ができなければ、チャンスを逃してしまうことに繋がります。
チャンスを逃すことによって利益の拡大ができないと、いつまでも「貸せる会社」になることができず新たなチャンスも生かせなくなる、という悪循環にはまりかねません。
御社の事業に資金需要があり、それを金融機関から調達しようとするのであれば、節税はコストミニマム戦略の一つとして位置づけ、事業の成長と資金調達能力向上を車の両輪として事業計画を作るべきでしょう。